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第1回 インピーダンスとバッファーの話


ギターの音を最も良くする方法をご存知だろうか?

それは、良質なシールドを1本用意して、
直接ギターアンプに繋ぐ(=直アンにする)ことだ。

当たり前と言うのなら、
いつもその間に繋いでいるエフェクターやら、パッチケーブルが、
音を汚していると言うことに気付いていると言うことだ。


しかし、当然エフェクターは使いたい。
でも、エフェクターOFFの時には、直接アンプに繋ぐのと近い音にしたい。

そんな欲張りな欲求を実現するために、
多種多様なパッチケーブルが発売されている。
実際ケーブルの善し悪しで、音質はかなり変わる。


では、すべてのパッチケーブルを良いものにして、
エフェクターを5個繋ぐシステムを作った。
それらを全部OFFにした時、アンプに直接繋ぐのに近い音がするだろうか?

実際に直アンにした場合と聴き比べれば一目瞭然。
結果は、音がかなり違うはずだ。


なぜそんなことになるのか。


一般的には、エフェクターのバッファーによる音質変化だと言われる。
(もちろんそれだけではないのだが...。)


バッファーとは何か。

ネット辞書によると、
電子回路の緩衝増幅器。バッファアンプ。
主に後段からの逆流や負荷変動の影響を吸収するために用いられる。
とある。

これでは少し判りにくい。


そもそも、エレキギターと言うものが、どのようにして音を拾っているかご存知だろうか?

ピックアップには、真ん中に磁石がある。そして、その周りに細い導線が巻かれている。
ただそれだけだ。
その上を金属製の弦が振動する。
すると、不思議なことに、ピックアップに微弱な電気が生じる。
その電気は、弦の振動に生き写しの波形をしている。
つまり、弦の振動が電気信号に置き換わって現れる。

これが、エレキギターが音を拾う原理で、
その小さな小さな信号をシールドで送って、ギターアンプで何万倍にも増幅している。


弦の振動をより効率良く拾うにはどうしたら良いか。
それには、
1) ピックアップの磁石を強力なものにする。
2) ピックアップに巻く導線の長さを長くする。

の2つのやり方がある。

1) は簡単そうだが、あまり磁力を強くしすぎると、弦が磁石に吸い寄せられて、響きが悪くなると言う弊害がある。
それに、磁石の強さには限界がある。なので、ある程度までしかできない。

2) は比較的簡単だ。長くするためには、細いケーブルを使えば良い。だから、ピックアップのケーブルはとにかく細い。

そして、細いケーブルを物凄い長さで使った結果、回路の抵抗は高くなる。
このような状態を、電気の専門用語で、ハイインピーダンスと呼ぶ。


効率良く弦の振動を拾うために優れた回路であるハイインピーダンスの回路は、
信号が劣化しやすいと言う欠点を持っている。

例えば、3メートルのシールドと、15メートルのシールドでは、明らかに音が変わってしまう。
(俗に言うハイ落ち)
エフェクターを沢山繋げるのは、結果的にシールドの長さを長くするのに等しい。
そうすると、音がとても悪くなってしまう。


どうすれば良いのか。
それを解決するためのものが、バッファーアンプである。

エフェクターに内蔵されているバッファー(アンプ)という回路は、簡単に言えば、
ハイインピーダンス回路を、ローインピーダンス回路に変換するためのもの。

ローインピーダンス回路はノイズが乗りにくいし、ケーブルを長くしても音が劣化しにくい。


その素晴らしいバッファーが、なぜ悪者になるのか。

それは、エフェクターに内蔵されているバッファーそのものが、あまり原音忠実性にこだわって開発されていないからだ。


そもそも、電気回路の設計者的な立場から見れば、バッファーでそれ程大きな音質変化など、ある訳ないと言う。
確かに、音質変化はそれ程大きくないのかも知れない。
だって、バッファーを通った音だって、ちゃんとエレキギターの音だ。
歪んだりしている訳でもない。

それでも多くのミュージシャンがそれを気にするのは、
彼らがやっていることが音楽だからであって、工業製品ではないからだ。
その変化が、必ずしも音楽的ではないと言うのが、
彼らがバッファーをこころよく思わない理由になっている。

しかも、そんなバッファー回路を、
3つも4つも通ったらどうなるだろうか?


普通のエフェクターは、繋いでいる限り、常にバッファー回路が生きている。
例えエフェクターのスイッチがOFFでも、バッファー回路だけは通るようになっている。
(だから少しづつ電池が減る。)
(では、本当の電源スイッチは何処にあるのかと言うと、シールドを差すことで電源が入るようになっている。)


現実として、エフェクターを1つだけ使うと言う人は少数だろう。
3つや4つ、場合によってはもっと多くのエフェクターが1人のプレイヤーの足下に置かれている。
つまり、その数だけバッファー回路を経由していることになる。


本当の意味でバッファーが必要なのは、一番頭に繋いだエフェクター、ただ1つだけなのに。